3-1 f字孔をデザインする
f字孔(SOUND HOLE)は文字通り音の通る穴です。ヴァイオリンの弦が振動し駒を経由して本体が振動し作られた音がf字孔から放出されます。形に個性が光るこのサウンドホールはヴァイオリンの音色、音量に大きく影響します。ゆえにクレモナ黄金期のf字孔を解明することで当時の名工たちが求めていた音の手掛かりになるのです。
実際、サウンドホールの形、位置の決め方はAmati,Stradivari,Guarneri ,Guadagnini等各製作者でそれぞれ異なります。
今回はStradivariの方法でf字孔を作っていきます。
f字孔の大きさ(長さ)
f字孔の全長(下穴と上穴との距離)は楽器のデザインに使用したCremonaCubitの黄金分割寸法を利用します。
長さが決まれば後は自由にデザインします。
特にガルネリ(デル・ジェス)はf字孔の形に関しては奥さんに任せて切らせていたとの研究もあるみたいです。
黄金分割図とf字孔の関係
3-2 f字孔の位置を決める
クレモナ黄金期の製作者たちの個性が光ったのは実はf字孔の形ではなく位置の決め方でした。
それだけ穴の位置が音色に影響することを熟知していた製作者たちは独自のメソッドを取り入れてゆきます。
ここでもストラディヴァリの方法を取り入れてみたいと思います。
大きな特徴として厚みを大きく残した表板の裏側から製図を施すことが挙げられます。
これにより音響を確かめながらより立体的なf字孔を作れるという利点が生じます。
ストラディヴァリが二コラ・アマティと同じ方式をとらなかった理由として胴を長くしたり、ヴァイオリンの幅を広げる等改良を続けていたためアマティと同じようにf字孔の位置を決めてしまうと上穴がより表板のセンターライン寄りになり美観を損なう恐れがあったためであると現時点では考えています。
3-3 f字孔を切り音響的に最適な形に仕上げる
f字孔は音の出口ですので、音を効率よく拡散させるためにより立体的にf字孔を築きます。
そのためにある程度厚みの残った表板にf字孔を開ける必要があるのです。